四国遍路ここが見どころ!

四国88ヶ所霊場に関することいろいろ。

四国遍路にかかわった人々(3)

四国遍路を順拝するとき、納札をするわけですが回数によって色が
違ってきます。
白−1回から4回まで  緑−5回から6回まで
赤−7回から24回まで 銀−25回から49回まで
金−50回から99回まで 錦−100回以上

四国88ケ所を一周し、高野山(奥の院)参詣を終え初めて1回と
数えるわけですが、単純に考えても一年に一回では、錦札まで
100年もかかります。現在、最高記録の人は400回を越えている
人がいます。

今回紹介する人・中務茂兵衛は、徒歩順拝約280回、
正確に言うと279回も巡ったのです。
現在は車での順拝が主流ですが、それでも銀・金・錦札までは
大変な遍路行だと思います。



中務茂兵衛

中務茂兵衛


では、生き仏と言われた中務茂兵衛(なかつかさもへえ)について
中務茂兵衛は弘化二年(1845)四月三十日、周防国大島郡椋野村十番戸
に生まれ、生家は代々庄屋職をつとめ、相当な資産家であったようです。
兄と弟が一人づついましたが、父は茂兵衛が十二歳のとき亡くなってい
ます。

この後は、兄柳蔵が家督を継いでいるために、成人になるまでは兄の世話
になっていたようです。茂兵衛は慶応二年二十歳のとき出奔し四国の遍
路となるのです。

それは、たんなる思いつきか、確とした理由があったのか詳しい事情は
わかりません。明らかなのは、大正十一年(1922)三月二十日、七十六歳で
亡くなるまで五十年以上も霊場を巡り続け、徒歩順拝二百八十度し、生き仏
として慕われたのです。

慶応二年八月、母フミは亡くなるのですが、故郷に帰ろうともしなかった
ようです。
それほどまでに修行を続けなければならなかった真意はどこにあったので
しょうか。家を棄て、故郷を棄てて、一生を遍路で過ごさねばならないほど
の宿命を背負っていたとは思えません。

仏教は江戸三百年の長きにわたり支配機構の一環にくみこまれて、事実上の
国教だったといえますが、明治に入り、その土台骨が今や音をたてて崩れ落
ちていくのである。
つまり、廃仏毀釈の嵐が吹き始め、明治新政府は神道を国教の座にすえ、
仏教に打撃を加え始めたのです。そんな時期に遭遇しながら茂兵衛は、たゆむ
ことなく霊場(仏)をめぐり続けたのです。

これは伝灯を絶やさぬための孤軍奮闘であったかもしれません、廃仏毀釈の嵐は
十年近く吹き荒れますが、茂兵衛はその間に三十回も四国を巡っている
のです。
そして、明治十五年に四国順拝六十五度を打ち終わるころには、自行から他行
へと意識の変換もなされています。

すなわち、自分のためだけの行でなく、人々のために身を捧げる行であり、
その一環として、『四国霊場略縁起道中記大成』という霊場案内記の出版して
います。
それにもう一つ茂兵衛のなした事跡として注目すべきは、道標の建立である。
こうした道標は一生のうちでどれほど建てたものか、現在確認されているもの
だけでも二百基以上があります。

茂兵衛の道標には、そのときの自身の順拝度数を刻み、なかには添句された
標石もあります。
それでは、なぜこれ程にも道標が必要であったのでしょうか。江戸時代
からの遍路道が明治に入り新道開発がなされ、そこで道に迷う遍路の為に道標
が必要になったと思われます。

そうした功徳も認められてか、京都の大本山聖護院から度牒をもらい、正式の
僧侶としても認められています。
歴史の中で様々取り沙汰された人物はつきませんが中務茂兵衛は、豊かな物質文
明を求める欲望中心の近代社会において、欲望をおさえ快楽主義に背を向けて
一生を乞食と放浪に過ごした生きかたは尊いとおもいます。

標石の添句に
    生まれ来て 残るものとて 石ばかり
      我が身は消えて 昔なりけり
まさに茂兵衛の生涯を詠った句ではないでしょうか。
  1. 2008/06/03(火) 10:40:56|
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